MCIから認知症へ——2025年の最新動向と、今日からできること
まず「MCI」とは?
MCI(軽度認知障害)は“正常と認知症の間”の状態。進行する人もいれば、元に戻る(改善する)人もいます。国内の臨床情報では、1年あたり約5〜15%が認知症へ進行、一方で1年あたり16〜41%が改善するとの報告があります。早めの受診と生活調整がカギです。
予防・リスク低減の最新知見
- 修正可能なリスク要因が拡大
ランセット国際委員会の2024年アップデートでは、視力低下・LDL高値が新たに加わり、修正可能な要因が14項目に。全症例の約45%が遅らせられる可能性がある、と結論づけています。視力検診や脂質管理も“脳の予防”として要注目です。 - 「聞こえ」への介入(補聴器など)がエビデンスに
無作為化比較試験ACHIEVE(2024)では、認知機能低下リスクの高い群で聴覚介入が低下を抑制する効果が示唆されました。国内研究からも「聞き返しが増えたら早めの補聴器」という示唆が出ています。聴力低下は主要なリスク要因のひとつ。放置しないのが大切です。
診断の進歩:血液バイオマーカーとアミロイドPET
- 血液検査(p-tau217など)が実用段階へ
p-tau217の自動化アッセイは高い診断精度を示し、二段階カットオフで性能を最適化する提案も。国内解説でも年齢で精度指標が変動することに注意が必要とされています。血液でのふるい分け→確定検査(PET/髄液)という流れが現実的に。
※国内では研究用の提供段階のものもあり、運用は医療機関の体制に依存します。 - アミロイドPETが保険適用(条件付き)
2024年より、レカネマブの適応判断目的にアミロイドPETが保険算定可となりました(施設要件・対象基準あり)。MCI〜軽度認知症でアルツハイマー病の病理確認が必要な症例に限られます。
新薬のいま:レカネマブと費用の動き
日本では抗Aβ抗体薬レカネマブが公的医療保険の枠組みで費用対効果評価の対象となり、2025年11月から薬価15%引き下げが了承されました。医療財政や患者負担を見据え、価格調整と最適使用の両輪で運用が進んでいます。
日本の政策:2024年「認知症基本法」施行
2024年1月1日に**「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行。本人参画や地域共生を基本理念に、国の認知症施策推進基本計画**が動いています。制度面の後押しにより、地域での相談・支援窓口の整備が進展。
早期対応の“実用ガイド”(ご家族・ご本人向け)
気づきのサイン
- 最近の出来事を繰り返し尋ねる/約束を忘れる
- 財布・鍵などをよく失くす
- 言いよどみが増えた、言葉が出づらい
- 趣味や外出が減った、段取りが苦手になった
最初の相談先(日本)
- かかりつけ医:簡易検査と専門医への紹介の起点
- 地域包括支援センター:介護保険の相談、日常の支えの設計
- 認知症初期集中支援チーム:自宅訪問での集中的支援(各自治体に設置)
30日アクション(無理なくできる範囲で)
- 血圧・脂質・血糖の“見える化”(健診 or かかりつけ医)
- 日中の歩行+筋トレを合計150分/週めざす(屋外の社交も兼ねる)
- 聴力チェック:聞き返しが増えたら補聴器相談へ(耳鼻科・認定店)
- 眼科受診で視力/白内障/緑内障の確認(視力低下は新たなリスク要因)
- 眠り・生活リズムの整え(就寝・起床時刻を固定/日中散歩)
- 家族で**“もしものとき”の話し合い**(財布・通帳・ID管理、連絡網、主治医)
まとめ
- MCIは“戻れる可能性”もある段階。だからこそ「早期に見つけて整える」メリットが大きい。
- 2024–25年は、予防のアップデート(視力・LDL)、聴力介入のエビデンス、血液マーカーとPETの活用、新薬の費用最適化が同時進行。受診・相談のハードルは確実に下がっています。
- 迷ったら、かかりつけ医+地域包括支援センターへ。制度面の後押し(認知症基本法)も始動済みです。



